プリキュア感想 - なぜオタクがプリキュアにはまるのか

はじめに

プリキュアを見続けているのは、

各作品それぞれがテーマについて良いとこ悪いとこ分かったうえで前向きな答えを出せるとこが好きだからだと思う。

プリキュアが好きなオタク (以後プリオタ)はある種「奇跡」のようなものを目の当たりにして、その経験が焼き付いて離れず、今でも欠かさずプリキュアを追い続けているのだと思う。

何を奇跡とするか

 プリキュアがシリーズを通して継承してきた価値観が少なくとも一つある。どんな時も「絶対にあきらめない」姿勢だ。筆者の印象に残っているのはふたりはプリキュアMaxHeartの最終話、圧倒的な力の差で近づくことさえできず、地球の崩壊をただ見ることしかできない二人だが、日常の大切さを思い出し、そのために何度でも立ち上がり、大切なものを守るために最後まで挑み続ける。これはシリーズを通してもはやテンプレの域であるが不思議なことに陳腐化しない。それはプリキュアの大切なものがそれぞれ異なるからだ。

これが見たくてプリキュアを見ている。ただ勇気を振り絞っている風な絵では感動できないが、プリキュアが何のために、何を克服しようとしているのか明確に理解しているからこそ、その勇気に共感できるのだと思う。

これはスタンリーのいうヒーローの物語で説明できる。

読者がヒーロー個人の人生に 興味を持っていないかぎり 読んでいる物語に深みが出ません 超人的な能力を持っている人だって あなたや私が抱えるような 個人的な問題を抱えていても おかしくないのです お金がないとか 家庭に問題があるとか 恋する相手が 思いに応えてくれなかったり スーパーヒーローと関わるのを 嫌がっていたりとかです 特定の能力が注目される 一、二次元的な存在におさまらないように 人柄や人格に 肉付けしてくれる要素は 考え出したら 本当に色々あります 欲しいのは三次元的なヒーローですから 私や皆さんと同じように 生きて 息をして 同じような心配事したり 同じように物事を経験する人物です 唯一の違いは 超人的な能力を 持っているということだけ

出典: https://www.ted.com/talks/stan_lee_what_makes_a_superhero

 言い換えれば、特別な能力は物語を動かす推進剤になるだけで方向性までは決定しない、ヒーローの物語はヒーローの問題を掘り下げる、ヒーローが自分たちと同じように悩んで苦しむからこそその問題を理解できる。そして、問題に立ち向かう勇気を理解することができるのだろう。

 それを表す感想ががここにある。

どんなに頼りになっても、心が強そうに見えても プリキュアをちゃんと普通の女の子と見て接して、気遣ってくれる精神を見せられるとたまらなく私は弱いのだ。

出典: https://twitter.com/umesawaalone/status/1312714460973330433

 プリキュアの人間的な一面がギャップとして働いていることが読み取れる。このようなシーンは、見ていて強い親近感を感じさせる。つまり、私もこのようなシーンを見せられると弱いのだ。

このようなシーンを踏まえて「絶対にあきらめない」姿勢を見せられると、どんなにありふれた言葉でも、そこに大きな意味を感じることができる。ぼやける視界はプリキュアに釘づけられて時が過ぎるのも忘れてしまう。

これを「奇跡」と呼びたい。

プリキュアたちのあきらめないという勇姿を目の当たりにし、その信念に心動かされ、ただ感動することを奇跡と呼ぼう。なぜなら、これはありふれた経験ではない、もはや常識では起こりえないからだ。思い返してほしい、人の言葉に心動かされたことなどそう多くはないはずだ。

テーマに対する造詣の深さ

プリキュアの好きなところは、勇気に感動できるというだけではない。

プリキュアの言葉に心動かされるのはテーマに対する明確な答えをプリキュアたちが探しだす過程を知っているからだ。テーマに対する答えはありふれているかもしれないが、その答えに達するまでの道のりを知っていれば価値が変わる。例えば、歴史上の名言は内容そのものよりも誰が言ったのかが重要であることが多い。

 例えば、Go!プリンセスプリキュアでは夢を追いかける姿だけでなく、夢を追求する活動は孤独でいつも絶望の危険をはらむことが語られた。キラキラ☆プリキュアアラモードでは大好きなスイーツのおかげで大切な仲間ができたが、大好きなものがあるから嫌いなものが生まれ、やがては争いの種になることが語られた。ハピネスチャージプリキュア!では「みんなの幸せがわたしの幸せ」というという価値観が自己犠牲の過度な美徳化になっているのではないかと問われた。

これらの問いに明確な答えは存在しない。状況次第だったり、微妙なバランスが求められたりする。現実でさえ、これらが命に係わるほどの問題に発展したとしてもおかしくはない。「夢」や「大好き」、「誰かのために」といった一般的な美徳に存在する良いところ悪いところを描くプリキュアには考えさせられるものがある。

簡単に答えを得ることができない問題に対して、プリキュアから学んだことがある。それは、一筋縄ではいかない問題に対して、前に一歩でも進むためには「勇気」をもって立ち向かう必要があることだ。

「勇気」は「奇跡」を引き起こす重要な要素だ。プリキュアの瞳が勇気に輝くとき「奇跡」は起こる。ジョジョシリーズの作者荒木飛呂彦氏によると、「勇気」とは最も共感されやすいものらしい。共感が強い感動を呼び起こす作用をもたらしている。どちらも心理的な影響に関するものだし、プリキュアの感情と似たものを感じ取っているように思えるから多分きっとそうに違いない。

おわりに

私の好きなエピソードは夢原のぞみが絶望の仮面を破り、これからどうしたいかを明確に意識するときの話だ。無粋かもしれないがYes!プリキュア5のいう「夢」や「勇気」の考え方はアドラー心理学と一致するところが多い。物語は共感してもらえなければ深みが出ない。だから製作者は人間の心理についてよく考えていることだろう。その結果が心理学者とよく一致するという結果はとても面白い。ある意味で奇跡なのかもしれない。プリキュアは女児だけでなく、万人に通用する価値観を提供しているという意味で。

プリキュアがバイブルになったとき

諸君、私はプリキュアが好きだ...

いい年こいた成人男性がプリキュアを見てむせび泣くには理由がある。

同志とはそれを共有したい。

まだプリキュアをよく知らない人には、この記事が良ききっかけになることを願う。

 

回心のとき

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